「日本の文化は郷土から」
私たちの研究所は、2010年、全国各地の郷土芸能が消滅しているのを知った当研究所の代表者によって、郷土芸能を調査・記録するとともに、生で継承すること、継承の手法を探ること、そして、郷土芸能がむかし持っていた世代間交流を再生する場として立ち上げられました。
研究所代表は日本の音楽専門誌の和太鼓分野の専門家として日本中の太鼓についての調査・執筆や愛好者の方に伝える活動を約10年間、行なっていましたが、まず、みずから郷土芸能の継承をすることに決め、東京での仕事をすべて畳んで、故郷に稽古場をかまえました。

組太鼓という大衆の中から力強く花ひらいた芸能の中に、地域の郷土芸能の型を閉じ込めていく手法、学校の中で保存していくスタイルなど、ありとあらゆる手法を試し、現在も、その過程を見守りながら、活動を継続しています。

当研究所が最も大切にしているのは「人を育てる」ことです。
各地の伝統産業についての調査も行う中、多くのお金が投じられては湯水のように消えていく姿を目の当たりにしました。
「ここまでくれば、焼石に水。お金を投じるよりも人を1人でも育てること」
そんな思いで、2010年から約10年、たった1人で始めた郷土芸能の継承は、高校生や子どもたち、地元の若者たちを中心に手から手へ受け継がれることになりました。そして、今では、研究所の20代、30代、40代の若手の継承者が育ち、高齢化で上がらなくなった神輿を手伝いに行ったり、盆踊りの音頭取りをつとめたりと、少しづつ地域の皆さまのお役に立てるようになってきました。

その過程を見て下さっていた様々な地域の方々、団体さまより、お声かけをいただき、拠点であった兵庫県神戸市の神出町を出て、淡路島、稲美町、東京、大阪と様々な土地のお手伝いをさせていただくようになりました。
また子どもたちにぜひ本物を体験させたいと、こども園からも沢山のお声掛けをいただきました。
現在は、4歳から85歳の研究生たち、あらゆる世代が集う楽しい稽古場となりました。
また、共に稽古場を支えてきたメンバーが講師となり、それぞれの地域の文化を大切にしながら和太鼓を通して郷土文化を伝えていく当研究所の手法を受け継ぎ、各地で地域おこしに携わっております。

2014年からは郷土芸能の土台にある農業、漁業、林業に目を向け、研究所のメンバーが実際に作業を体験することで作品制作が始まりました。
はたおり、そうめんづくりなど多くの伝統産業にもたずさわり、日本の海、山、郷の素晴らしさに触れました。
2021年より神戸市神出町の本拠地に加えて、淡路島に農業、漁業、林業の拠点となる場所を構え、子どもたちから一般の皆さん向けに第一次産業の大切さ、日本の自然の大切さ、また、自然とともに生きてきた先祖たちの工夫を伝える活動が加わり、多くの専門家の皆さんを迎えた沢山の企画が立てられています。